LEに於ける重要な要素

物流現場は多角度からメスを入れて問題点をあぶり出す

皆さんはケーキを食べる時、まず概観を見ますね。次にナイフで人数分にカットして食べる。でも、カットの仕方が違うと、ケーキの中味も異なって見えます。横から切れば、その層の材料だけが、(例えば生クリーム)見えます。逆に縦に切れば、4つの層の材料が断面で見ることが出来ます。切り方で、全く異なったものに見えてくる訳です。もちろん、チョコクリームしか見えない外観とは、全く違った姿が見えてきます。
物流現場の分析も全く同じです。「生産性分析」は、LEにとって最も重要な分析ですが、これだけでは、誤った理解、あるいは部分的な理解をする可能性があります。
「ロジスティクス特性分析」の結果と重ね合わせると、生産性分析だけでは見えなかった問題点が、くっきりと見えることがあります。この様に、LE標準としている各種の分析結果を重ね合わせて、複合的な分析を行うことにより、正しい問題点のあぶり出しが出来ることになります。

 

特に重要な指標(インディケーター)

●負荷変動指数

生産工場でも、物流現場でも、負荷変動が大きい職場は、第一に作業負荷の平準化に取り組む必要があります。この際、改善の必要性を定量的に表す指数が負荷変動指数です。負荷変動指数は、以下の計算式で求められます。
・負荷変動指数=σ(標準偏差)/μ(平均)
分子であるσ標準偏差は、各標本の平均との絶対差、μ平均は対象となる期間の標本の平均値です。余り数学的なところに深く入り込みますとこれだけで、イヤになってしまいますので、本文では詳細説明をしません。
負荷変動指数が、70%を超えるような状況ですと、負荷の変動が効率に大きく影響します。
「負荷平準化の取り組みを物流現場で行うことは無理」と言う物流現場のリーダーが多いのですが、決して不可能ではありません。
LEによる改善施策創出プロセスで、多くの負荷平準化の施策を創出することが可能です。

 

●労働時間弾力性指数

物流現場は、先に述べたように負荷変動が大きい職場が多くあります。この様な職場は、負荷の平準化に取り組むと共に、負荷の変動に応じて、工数(作業員の労働時間)をフレキシブルに増減させるコントロール(ジョブコントロール)が重要な要素となります。
工数の変動化(フレキシブル化)は、物流業務のコストを適切な数値に収めるために非常に有効な手段です。逆に言うと、作業工数が固定的な職場では、負荷変動に対処できず、コストが高い構造になってしまいます。
これらの対策を実施しなければいけない職場かどうかの判断は、労働時間弾力性指数を見ることによって可能になります。
弾力性指数<60%の場合(労働時間と作業負荷の相関が低い)、固定的な作業管理になっていると判断され、この分野での対策を行わなければ採算に影響を与えます。
弾力性指数を高めるためには、多くの施策がありますが、第一には、その時点毎の現場の状況を情報として捉え、その情報を元に的確な対応を指示していくことにあります。この対策を実施する際には、労務管理面の配慮も必要になりますので、上席管理者の判断を仰いで、慎重に進めるべきでしょう。

 

●付加価値分類分析

LEでは、機能分析を最初のステップとして取り組みますが、この機能分析では、最も下位の機能(第4レベル機能)の一つずつに付加価値分類のコードを付与します。(LEで提供される機能構造図テンプレートには標準的な分類が予め付与されています。)
付加価値分類は、①付加価値機能、②付帯機能、③ムダ機能の3分類に分類されます。
これらの内、ムダ機能を減少させることは、LEの改善アプローチで優先的に取り組むべきテーマです。ムダ機能は、多くの事例で「手待ち」が最も多い工数となります。手待ちとは、出荷伝票の到着待ち、出荷商品の到着待ちなどが主なものになります。
ムダ機能工数が、全体の10%を超えるような職場は、ムダ機能工数の削減の取り組みを行うことが、必須条件となります。

 

●ピック属性分析

ピッキング方式の選択は、物流センター作業プロセス設計のなかでも、最も生産性に大きな影響を与えるものです。ピック方式は様々な種類がありますが、第一に個別ピックか、総量ピックかの選択を行う必要があります。
このピック方式を選択する際に、最も重視する分析が「ピック属性分析」です。
①1出荷先当たりのピック件数、②1アイテム当たりのピック件数/日、③1ピック当たりのピック個数などの指標により、適正なピック方式を選定していきます。この選定が間違っていると、生産性が大きく劣ることになり、経営面でも影響が出る場合があります。
物流センターのプロセス設計を始める前に、LEによる徹底した分析で可視化を進めることにより、より的確な設計が可能になります。LEの活用無しでセンターのプロセス設計をすることは、「暗闇を手探りで進む様なもの」と言えます。

 

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